この記事では、ネットワーク初学者の方向けに、便利なツールであるCiscoの「パケットトレーサー」を使ってACL(アクセスコントロールリスト)を設定をする方法をご紹介します。
パケットトレーサーを活用して、実践的なネットワークを実際に手を動かしながら構築することで、ネットワーク理解が深まると思います。
ACLってなに?
アクセス制御リスト(ACL)は、ネットワークセキュリティを強化するための強力な機能であり、ネットワークデバイス(ルーターやスイッチ)で設定されるルールのリストです。
これにより、特定のユーザーやデバイスがネットワークリソースにアクセスする際の条件を指定できます。例えば、特定のIPアドレスやポート番号からのアクセスを許可または拒否することもできます。
ACLの重要性と使いどころ
- 不正アクセスの防止: 特定のIPアドレスからのアクセスを制限することで、悪意のあるユーザーからの攻撃を防げます。
- トラフィック制御: 特定のポートやプロトコルを制御することで、トラフィックの効果的な管理が可能になります。
- セキュリティ強化: 内部ネットワークと外部ネットワークの間でセキュリティを強化できます。例えば、社内ネットワークからの出口トラフィックを制御して、機密情報の漏洩を防止できます。
ネットワーク構成
今回、ACLを設定するネットワーク構成は、以下の通りとなります。
上記のように、デバイスの配置・配線、2つネットワークを構築します。
デバイスの配置・配線、IPアドレスの設定が分からない方は、こちらの記事を参考にしてください。
ACLを設定していない状態だと、PCA、PCBどちらからもサーバーAにアクセスができます。
PCAからサーバーへの通信テスト(ACL設定前)
デバイスの設置・配線、IPアドレスの設定等ができましたら、ルーターに以下のようなACLを設定していきます。
- PCAからサーバーAへの通信を遮断
- PCBからサーバーBへの通信を許可
ルーターへACLを設定する
ACLの基本的な構文は、許可または拒否する対象(IPアドレスやポート番号)とアクション(permitまたはdeny)から成り立ちます。例えば、「特定のIPアドレスからのHTTPトラフィックを許可する」といったルールを作成できます。
ルーターへの設定の大きな流れは以下です。
- ルーターにログインし、設定モードに入る。
- ACLを作成し、適用したいインターフェースを選択する。
- 許可または拒否する条件を指定する。
- ACLを適用し、変更を保存する。
ACL設定で使用する代表的なコマンドは以下です。
入力モード | 設定内容 | コマンド |
---|---|---|
グローバル | 番号付き標準ACL | access-list ACL番号 permit[deny] 送信元IPアドレス ワイルドカードマスク |
グローバル | 名前付き標準ACLの作成 | ip access-list standard ACL名前 |
標準ACLコンフィグ | 名前付き標準ACLの設定 | permit[deny] 送信元IPアドレス ワイルドカードマスク |
インターフェイスコンフィグ | インターフェイスへの適用 | ip access-group ACL番号 in[out] |
グローバル | ACL削除 | no access-list ACL番号[名前] |
グローバル | 設定確認 | show access-lists |
R1への設定コマンド
今回設定するACLのコマンドは以下になります。
R1(config)#access-list 10 deny host 192.168.1.10
R1(config)#access-list 10 permit host 192.168.1.20
R1(config)#access-list 10 permit any
R1(config)#interface fastEthernet 0/1
R1(config-if)#ip access-group 10 out
1~3行目でACLのルール設定を行い、ACLをインターフェスに適用しています。
通信テスト
PCAとPCBからサーバーAに、pingを送信してみます。
PCBからは、ACL設定前と同様に応答が返ってきておりますが、PCAは「Reply from 192.168.1.1: Destination host unreachable.」となり、通信が遮断されていることが確認できます。
まとめ
ACLはネットワークセキュリティを強化する重要な手段です。このガイドでは、ACLの基本的な概念、設定手順、初心者向けの設定例を紹介しました。ACLを活用することで、ネットワークの保護とセキュリティを向上させることができます。
今後の学習においては、さらに深い理解を目指すことや、実際にルーターやネットワーク機器を操作してみることをおすすめします。インターネット上には豊富な学習資料やオンラインコースが存在していますので、自分の目標に合った学習を進めていくことで、ネットワークの世界をより深く探求していくことができます。
皆さんがよりスムーズなデータ通信とセキュアなネットワークを構築し、知識を活かして成長していくことを願っています。頑張ってください!